vrio フレームワーク

VRIO分析とは?VRIOフレームワークのやり方やメリットを事例で解説

読み取り時間 : 約10分

トピック :

  • 戦略計画

企業は常に競合に囲まれており、その中で優位に立つことがビジネスの成功に欠かせません。競争の激しい市場において、自社の競争力をどう評価し、維持するかが重要な課題です。その鍵となるのが、自社の競争優位性を見極めることです。

そこで役立つのが、VRIO分析です。

VRIO分析は、競争優位性を分析するための体系的な手法であり、自社のリソースを特定し、評価するプロセスを通じて、競争力を生み出す要因を明確にします。これにより、どのリソースが競争優位性の源泉となっているのかを理解し、その強みを最大限に活用できるようになります。

この記事では、VRIO分析のフレームワークや基本概念を解説し、リソース評価に必要なスキルや知識、そしてVRIO分析に役立つテンプレートを活用事例と共にご紹介します。

VRIO分析とは?

VRIO分析は、企業が持つリソースや能力が競争優位性をもたらすかどうかを評価するためのフレームワークです。VRIOは、「ヴリオ」と読み、その名はフレームワークに含まれる4つの要素の頭文字を取ったものです。

VRIO 分析の4つの要素とは、経済的価値 (valuable)、希少性 (rare)、模倣可能性 (imitable)、組織 (organized) を指します。

これらの条件を満たすリソースは、企業の持続的な競争力の源泉となります。では、それぞれのVRIO要素について詳しく見ていきましょう。

経済的価値 (Valuable): リソースの価値を判断する際に、次の質問を自問してみてください。

  • このリソースは、当社が市場機会を活用するのに役立つか?
  • このリソースは、市場の脅威から当社を守るのに貢献するか?
  • このリソースは、顧客にとって魅力的であるか?

これらの質問のいずれかに「はい」と答えられる場合、そのリソースには経済的価値があると考えられます。

希少性 (Rare): 少数の企業しか持たないリソースは、希少性を持ちます。ただし、この希少性は永続的ではなく、やがて他企業に模倣される可能性があります。

そのため、自社のリソースを定期的に評価し、希少なリソースがある場合は、その優位性を早急に活用することが重要です。時間が経つにつれて、これらのリソースの競争力が失われる可能性があるためです。

模倣可能性 (Imitable): リソースの希少性は、他企業がそれを模倣できるかどうかに依存しますが、もしそのリソースが簡単に模倣できないものであれば、競争優位性は長期にわたって維持されます。

この点を踏まえ、VRIO分析の3つ目の要素である模倣可能性を検討します。もしリソースの取得に高いコストがかかる、または特許や商標で保護されている場合、そのリソースは模倣されにくいと考えられます。

組織 (Organized): 経済的価値があり、希少で、模倣されにくいリソースを持っている場合、次に考えるべきことは、社内でそのリソースをどのように活用するかです。これらのリソースを効果的に活用するためには、明確な管理システム、プロセス、組織構造が必要です。

リソースを最大限に活用するために、プロジェクトや取り組みを調整することが求められる場合もあります。企業文化が柔軟で自律性を重んじるものでなければ、リソースを特定しても活用が難しくなることがあります。

VRIO 分析のやり方

「VRIO」の各要素を理解したところで、実際にVRIOフレームワークをどのように活用するかを見ていきましょう。VRIO分析を通じて、競争優位性を見極め、それを最大限に活用するためには、次のステップを踏むことが重要です。

VRIO分析は、定義分類分析の3つのステップで進めます。それぞれのステップについて以下で詳しく説明します。

まず、これらのステップを始める前に、評価対象となるリソースのリストを作成しましょう。全社から関係者を集め、ブレインストーミングを行うことで、共同で自社のリソースリストを作成することが効果的です。

(もしこのプロセスがスムーズに進まない場合は、SWOT分析を活用して、自社リソースの特定に役立ててください。SWOT分析の方法については、こちらのブログ記事で詳しく紹介しています!)

リソースのリストが完成したら、いよいよVRIOに進みます。

SWOT 分析 テンプレート
SWOT 分析の例(オンラインで変更するには画像をクリック)

1. リソースを定義する

リソースは通常、財務人材有形資産無形資産の4つのカテゴリーに分類されます。VRIOフレームワークを適用する前に、各リソースがどのカテゴリーに該当するかを確認しましょう。以下に、各リソースの種類を説明します。

  • 財務: これは資本、つまり会社が自由に使えるお金を指します。現金だけでなく、株式や債券なども含まれます。
  • 人材: 従業員が持つ知識やスキルといった、人材リソースを指します。
  • 有形資産: 施設、設備、材料などの物理的なリソースを含みます。ただし、有形資産は模倣されやすいリソースでもあります。
  • 無形資産: 特許やブランド認知度などの知的財産が含まれます。

2. リソースを分類する

リソースの定義ができたら、それぞれをVRIOフレームワークに当てはめて分類します。このプロセスでは、リソースを以下の4つのカテゴリーに分類します。

  • 競争力の均衡: 他社と同等の競争力を持つリソース。
  • 一時的な競争優位性: 短期間のみ優位性を持つリソース。
  • 未使用の競争優位性: 活用されていないが優位性を持つリソース。
  • 長期的な競争優位性: 長期にわたり優位性を維持するリソース。

VRIOプロセスでは、各リソースについて次の質問を順番に検討します。

  1. 経済的価値があるか: 「はい」なら次へ進みます。
  2. 希少性があるか: 「はい」なら次へ進み、「いいえ」ならそのリソースは競争力の均衡に分類されます。
  3. 模倣が難しいか: 「はい」なら次へ進み、「いいえ」なら一時的な競争優位性に分類されます。
  4. 組織内で活用されているか: 「はい」なら長期的な競争優位性に、「いいえ」なら未使用の競争優位性に分類されます。

3. リソースを分析する

リソースの定義と分類が終わったら、それらを詳細に分析します。分析の目標は、リソースを競争優位性に発展させることです。具体的には、現在のカテゴリーから上のカテゴリーに移行できるリソースを特定します。

特に、「未使用の競争優位性」に該当するリソースがあるかを確認します。これらのリソースを活用できる組織体制を整えれば、長期的な競争優位性に変えることが可能です。

とはいえ、未使用の競争優位性を長期的なものに変えるには、リソースに適したビジネス戦略の立案が必要です。戦略立案には時間がかかるため、社内の関係者と協力して、すべてのリソースをカバーする現実的な戦略を構築することが求められます。

VRIOフレームワークは、自社の分析に最適なツールです。しかし、競争は自社の外で起きていることも忘れてはいけません。市場での競争力を高めるには、競合他社のビジネスも分析する必要があります。そんなときに役立つのがSWOT分析です。VRIO分析で自社を分析した後は、SWOT分析を用いて競合他社との比較を行いましょう。

 

VRIO分析の例

ではVRIO分析の活用例を使って具体的にフレームワークを理解していきましょう。

リソース: 先進的な製品開発技術

1. 経済的価値 (Valuable) の評価

  • 質問: この製品開発技術は市場機会を活用するのに役立つか?
  • 分析: 先進的な製品開発技術が新しい市場ニーズに迅速に応える能力を持っている場合、顧客の期待に応えられ、売上増加や市場シェア拡大に貢献する可能性があります。
  • 結果: はい、この技術は経済的価値があると評価されます。

2. 希少性 (Rare) の評価

  • 質問: この技術は業界内で一般的でないか?
  • 分析: 先進的な製品開発技術が特定の企業のみに独自に保有されている場合、その技術は希少性を持ちます。業界の他の企業が同様の技術を持っていない場合、競争上の優位性を確保できます。
  • 結果: はい、この技術は希少性があると評価されます。

3. 模倣可能性 (Imitable) の評価

  • 質問: この技術を他社が模倣するにはどのくらいのコストや時間がかかるか?
  • 分析: この技術が高度な専門知識や独自のプロセス、特許によって保護されている場合、他社が模倣するのは困難です。模倣に高いコストがかかる場合、そのリソースは持続的な競争優位性を提供します。
  • 結果: はい、この技術は模倣されにくいと評価されます。

4. 組織 (Organized) の評価

  • 質問: この技術を効果的に活用するための組織的な準備が整っているか?
  • 分析: 企業がこの技術を最大限に活用するために必要なプロセス、チーム、戦略を整備している場合、技術は企業の競争優位性を支えます。これには、技術の運用方法や市場への導入戦略が含まれます。
  • 結果: はい、企業はこの技術を効果的に活用するための組織的な準備が整っていると評価されます。

総合評価

この製品開発技術は、経済的価値、希少性、模倣不可能性、組織の準備のすべての条件を満たしているため、企業にとって長期的な競争優位性を提供するリソースとして評価されます。

このように、VRIOフレームワークを用いることで、リソースがどのように競争優位性に貢献するかを明確にし、そのリソースをどのように活用すべきかを戦略的に判断できます。

では実践してみましょう!Lucidspark で戦略計画セッションを行う方法をチェックしてみましょう。

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