アジャイル開発手法

アジャイルとは? "Agile" の意味やアジャイル開発の進め方わかりやすく解説

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トピック :

  • アジャイル・プロジェクト計画

現代のビジネスは、目まぐるしく発展するテクノロジーと市場のペースに追いつくための方法を常に探し求めています。スピードが重視される環境では、開発チームにはこれまで以上に敏速で柔軟な対応が求められます。 

こうした状況に応えるのが、アジャイル方式です。

そもそもアジャイル・Agileの意味は?

「アジャイル(Agile)」という言葉は、もともと「素早い」「機敏な」「柔軟な」といった意味を持つ英単語ですが、ソフトウェア開発やプロジェクト管理では、変化に柔軟に対応し、迅速に成果物をリリースしながら、継続的に改善していくプロジェクト運営のアプローチを意味します。

アジャイル開発とは?

そのアジャイルを活用したアジャイル開発とは、従来の開発プロセスである複雑さや文書化の重要性に対する問題に対処するために、ソフトウェア開発者のグループによって提唱されたアプローチです。 

方法論の創立を記録するアジャイルソフトウェア開発宣言 (Agile Manifesto)では、アジャイル哲学の指針として4つの価値と12の原則が挙げられています。 

アジャイルの4つの価値

  1. プロセスやツールよりも個人と対話を。

  2. 包括的なドキュメントよりも機能するソフトウェアを。

  3. 契約交渉よりも顧客との協調を。

  4. 計画に従うよりも変化への対応を。

これらの価値は、顧客のニーズに応え、より効率的に変化に対応することで、質の高い製品を確実に生み出し、顧客の満足度を高める開発プロセスを推進することを目指したものです。   

アジャイルの12原則

  1. 顧客満足度を最優先し、価値あるソフトウェアを早く継続的に提供します。
  2. 要求の変更はたとえ開発の後期であっても歓迎します。変化を味方につけることによって、お客様の競争力を引き上げます。
  3. 機能するソフトウェアを、2~3週間から2~3ヶ月というできるだけ短い時間間隔でリリースします。
  4. ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません。
  5. 意欲に満ちた人々を集めてプロジェクトを構成します。環境と支援を与え仕事が無事終わるまで彼らを信頼します。
  6. 情報を伝えるもっとも効率的で効果的な方法は対面で話をすることです。
  7. 機能するソフトウェア数こそが進捗の最も重要な尺度です。
  8. アジャイル・プロセスは持続可能な開発を促進します。一定のペースを継続的に維持できるようにしなければなりません。
  9. 技術的卓越性と優れた設計に対する不断の注意が機敏さを高めます。
  10. シンプルさ(ムダなく作れる量を最大限にすること)が本質です。
  11. 最良のアーキテクチャ・要求・設計は、自己組織的なチームから生み出されます。
  12. チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します。

こうしたアジャイルの価値と原則は、ソフトウェア開発とその他のプロジェクト管理プロセスの両方における無数のフレームワークや方法論に包括的な哲学として応用されています。

アジャイルの精神は、こうした価値や指針となる原則に従い、柔軟性を重んじ、不確実な環境下で変化に適応するための基盤となります。製品のスピーディなデリバリーに加え、顧客、ユーザーとビジネス上のニーズによりよく対応するための考え方として、多くのチームに採用されています。 

アジャイルのメリットとデメリット

アジャイル手法は、多くのビジネスやチームに採用され、非常に効果的に活用されています。もちろん、完璧な方法論はありませんが、アジャイルもその例外ではありません。しかし、アジャイルのデメリットもきちんと理解すれば、むしろそれが改善点となり、プロジェクトをより良く進める手助けになります。

1. ステークホルダーのエンゲージメントとコラボレーションを強化する

アジャイルでは、顧客やステークホルダーとのコミュニケーションが重要です。これにより、ニーズやフィードバックをリアルタイムで取り入れることができ、満足度が高まります。でも、頻繁なミーティングや調整が増えることは、確かに忙しさを感じさせるかもしれません。そこで重要なのは、ミーティングの効率化です。例えば、定期的な「チェックイン」を短時間で行い、必要な情報だけを共有することで、無駄な時間を減らすことができます。少しずつ慣れていけば、これも負担にはならないはずです。

2. 費用とスケジュールの予測可能性が高まる

反復的にスプリントを行い、途中で進捗を確認することで、予測可能性が高まりますが、初期段階で計画を固めすぎないことも大事です。アジャイルは変化に対応する柔軟性が強みなので、予算やスケジュールをあまり厳密に最初から決めすぎないようにしましょう。それでも、スプリントの終わりに毎回「次に何をするべきか」を見直すことで、だんだんと予測が立てやすくなります。

3. 変更に柔軟に対応できる

アジャイルの大きな特徴は「変更に柔軟に対応できる」ことです。確かに、頻繁な変更が混乱を招くリスクはあります。しかし、これはうまく管理すればメリットになります。例えば、リリースのたびに小さな変更を取り入れていくことで、大きな変更が必要になる前に改善を積み重ねられます。チーム全員が一度に大きな変更に取り組むのではなく、徐々に対応していくことがコツです。

4. より質の高い製品を生み出せる

アジャイルでは定期的にテストを行い、ユーザーのフィードバックを得ることができるため、質の高い製品を生み出すことができますが、過剰なテストや変更に時間がかかる場合もあります。これに関しては、「最小限の有効な製品(MVP)」を意識して、最初から完璧を求めすぎないことが重要です。初めから全てを完璧にしようとすると、時間がかかりすぎてしまいます。少しずつ、素早くリリースして、改善を繰り返すことで品質はどんどん向上します。

5. リスクを低減し、ROI を早い段階で実現できる

アジャイルは、変更を繰り返しながらリスクを低減し、迅速にROIを得られるという利点があります。ただし、リスクを完全に排除することはできません。リスクが完全にゼロになるわけではないので、定期的なリスクレビューを行うことが大切です。何か問題が起きてもすぐに修正できる体制を整えておくことで、大きな問題に発展する前に手を打つことができます。

アジャイルは、確かに柔軟性を重視するがゆえに、初めて取り組む場合や大規模なプロジェクトでは少し不安に感じるかもしれません。しかし、デメリットには必ず「解決策」があります。アジャイルのデメリットを理解して工夫することで、プロジェクトのスムーズな進行を実現できます。

アジャイル開発の進め方

アジャイルのライフサイクルは以下の6つのステップで構成されます。

1. コンセプト

最初のステップでは、プロジェクトのスコープと優先順位を定めます。チームメンバーとステークホルダーを集め、ブレインストーミングでビジネス上の機会を特定し、各プロジェクトに要する期間と費用を見積ります。続いて、実現可能で最も価値の高いプロジェクトがどれかを判定し、そこからプロジェクトのバックログの優先順位決めを行います。

2. インセプション

プロジェクトの概要が定まったら、完了へのアプローチを探ります。チームに必要となるメンバーや顧客の初期の要件などを議論し、チームの責任範囲と各スプリントで行う作業のスコープを定め、図に落とし込みます。 

3. 反復

最初のプロジェクトの定義と承認が完了したら、開発チームが最初の反復に取り掛かります。 

この段階には基本的に以下のワークフローが含まれます。

  • 要件—製品バックログとステークホルダーのフィードバックに基づき要件を確定。
  • 開発—定められた要件に従い製品を開発。 
  • テスト—機能の検証と問題の発見のために QA テストを実施。
  • デリバリー—動作する製品をプロダクション環境へ移行。 
  • フィードバック—顧客やステークホルダーからのフィードバックを収集し、次回の反復の要件を定義。

4. リリース

複数回の反復を経て、最終製品のリリースとなります。このリリース段階では、最終テストと品質保証を実施し、不具合の特定や欠陥への対応を行い、ユーザードキュメントを完成させてプロダクション段階への移行を行います。

5. プロダクション

いよいよ製品の一般公開です。プロダクション段階では、機能を公開し、システムがスムーズに動作し、ユーザーに使用方法を確実に理解してもらえるよう、継続的なモニタリングとサポートを提供します。 

6. 提供終了

陳腐化したり、不要となったり、交換可能な状態となった製品は生産/提供終了段階へと移ります。この段階には、顧客への通知やシステムリリースのプロダクション環境からの移行など、サポート終了に関する対応すべてが含まれます。    

アジャイル開発手法の例 

アジャイルは、さまざまな開発モデルに指針として応用できる哲学です。アジャイル方法論としては、以下の4つの手法がよく知られています。

スクラム 

スクラムとは、複雑な製品の開発、デリバリーとサポートを行うため、部門横断的なチームワーク、責任の明確化と反復を重視するアジャイルフレームワークです。主にソフトウェア開発の世界で使われますが、その原則は他のプロジェクト管理にも応用が可能です。 

スクラムフレームワークは、以下の主な役割、イベントと成果物から構成されます。

スクラムにおける役割 : 

  • 製品オーナー
  • スクラムマスター
  • スクラム開発チーム

スクラムにおけるイベント : 

  • 日次のスクラム
  • スプリント計画ミーティング 
  • スプリントレビュー
  • スプリントの振り返り

スクラムにおける成果物 :

  • 製品バックログ
  • スプリントバックログ
  • インクリメント (またはスプリント目標)

スクラム チームは、スクラムタスクボードなどのツールを使用してタスクやスプリントを整理し、チーム メンバーがプロジェクトの現在のステータスを視覚化できるようにします。

カンバン

カンバンは、チームの協業を効率化することを目指したアジャイルモデルで、以下の3つの原則に従ったものです。

  • ワークフローを視覚化。
  • 仕掛品の量を制限。
  • 優先順位に基づいてワークフローを整理。

スクラムとは異なり、カンバンでは役割やスプリントの定めはなく、サイクルをより短期化することでデリバリーの早期化を実現し、開発においていつ、誰が何を担当するかをチーム全員が把握できるよう、透明性の向上を目指すものです。 

オンラインカンバンボードのようなツールを使用すると、チームメンバーはアイデアを提供したり、タスクのステータスを変更したり、進捗状況を追跡したりできるため、全員がより効率的かつ効果的に共同作業を行うことができます。

プロセスをビジュアル化することで、全員が状況を共有し、優先度の高い、または影響の大きい作業を優先して進められるようになります。 

アジャイルカンバン方式を使ったボード
オンラインカンバンボードの例 (画像をクリックしてオンラインで変更)

エクストリームプログラミング (XP)

XP は、ソフトウェア開発プラクティスのための最も具体的なアジャイル フレームワークです。高品質のソフトウェアを作成するだけでなく、開発チーム自体のプロセス全体を容易にすることを目的としています。 XP は、コミュニケーション、フィードバック、シンプルさ、勇気、敬意を大切にしています。

以下に最適です:

  • 常に変化する要件がある
  • チームには厳しい納期がある
  • ステークホルダーは、納期の中でリスクを減らすことを望んでいる
  • 単体テストと機能テストを自動化することができる

ユーザー機能駆動開発 (FDD)

Feature Driven Development (FDD) は顧客中心のアジャイル方法論ツールで、インクリメンタル開発と全レベルでのステータスレポートに重点を置いています。このアプローチにより、ソフトウェア開発における最大の障害である「混乱」と「手戻り」の2つを防ぐことができます。

FDDは5つの基本的な手順に従います:

  • 全体モデルの開発
  • 機能リストの作成
  • 機能別計画
  • 機能別デザイン
  • 機能別ビルド

FDD は、他のアジャイルフレームワークよりもはるかに短いタイムフレームで機能を提供するスケーラブルなモデルである。例えば、スクラムの典型的な4週間の反復サイクルの代わりに、FDD は2~10日ごとに機能を提供することを目指します。これにより、チームはエラーの追跡と対処、クライアントの要求への対応、新しいチームメンバーの迅速な登用を容易に行うことができます。

アジャイルの素晴らしいところは、それが実際のルールというよりガイドラインであるということです。したがって、どのようなアジャイル手法に従うにしても、それがチームと顧客のニーズに対応していることを確認してください。結局のところ、アジャイルの目標は、チームがより良い仕事をより速く提供できるようにすることです。

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは?

ソフトウェア開発となるとアジャイル開発とともにウォーターフォール開発という開発手法を聞くことがあります。一部の用語や概念が似ているため、混同されることがあるアジャイル開発とウォーターフォール開発の主な違いを説明していきます。

進行方法

ウォーターフォール開発: ウォーターフォール開発は、段階的な進行を特徴とします。開発の各フェーズ(要件定義、設計、実装、テスト、展開)が順番に行われ、次のフェーズに進む前に前のフェーズが完了する必要があります。

アジャイル開発: アジャイル開発は、反復的かつインクリメンタルなアプローチを採用しています。開発チームは短いイテレーションを通じてソフトウェアを開発し、各イテレーションの終了時にリリース可能な機能を提供します。

変更への対応性

ウォーターフォール開発: ウォーターフォール開発では、一度進行が始まると各フェーズが完了するまで変更が難しいです。要件や設計が確定する前に変更が必要になると、コストや時間がかかることがあります。

アジャイル開発: アジャイル開発では、変更に柔軟に対応できるように設計されています。短いイテレーションを通じて、顧客のフィードバックを取り入れることで、要件や優先順位を変更することが容易です。

顧客関与の程度

ウォーターフォール開発: ウォーターフォール開発では、顧客がプロジェクトの初期段階で要件を提供し、実装が完了してからテストされた製品を受け取るまで関与が限られます。

アジャイル開発: アジャイル開発では、顧客との継続的なコミュニケーションと協力が重視されます。顧客は各イテレーションの間にフィードバックを提供し、製品の開発に積極的に参加します。

全体的にアジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは、ウォーターフォールが段階的進行を採用し、変更への対応が難しく、顧客関与が限られるのに対し、アジャイルは反復的かつ柔軟な進行を特徴とし、変更への対応性が高く顧客との継続的な関与が求められる点にあります。

 

スプリントにアジャイル開発を取り入れてるチームの概念図

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